「足もとの美」番外編 

足もとの美というタイトルですので、若干足に関係があるかも・・・でも、今回はマンホールではありません。

近江の〈西明寺〉〈金剛輪寺〉と並ぶ〈湖東三山〉の一つに〈百済寺〉というのがあります。
普通に読めば〈クダラジ〉というのでしょうが、ここは〈ヒャクサイジ〉と読むらしいのです。
その住所は、滋賀県愛知郡愛東町大字百済寺です。

ここを訪ねたのは2009年12月4日のブログ(足もとの美・愛東町)の中で
(1994年4月に安土城と石塔寺を見て百済寺へ回った)という記述をした通りです。
実は――帰りの時間の都合で、立ち寄った――という程度の事でしたが、以外にもこの事がその後の僕の記憶に鮮明に残ることになったのです。



足もとの美 番外編その1

まずはこの長い参道を登ります。

「足もとの美」番外編 






「足もとの美」番外編 



――この長い参道の先に何があるか――と、歩いているうちに、頭の中の期待は次第に大きく膨らんでいきました。





最初に出迎えてくれたのが、大きな草鞋(わらじ)でした。

「足もとの美」番外編 




この草鞋が――何の為にここに掛けられているのか――ということには興味はなかったのですが、この大きさには驚かされました。
建物(この寺の仁王門)と比べてみても、その大きさが異常だということが解ります。

これが今回紹介したかったものの一つです。




足もとの美 番外編その2

このお寺は、推古14年(606)に創建された古刹というのですが、天正元年(1573)4月11日、信長によって焼かれてしまった・というのです。
今から437年前の出来事ですから、現在の建物はおそらくその後のものだと考えるのが当たっていると思います。
なぜ年数に拘ったかというと、それがこの(鐘楼)を見たからです。


「足もとの美」番外編 



一見何の変哲もない普通の(鐘楼)にみえるこの(鐘楼)が、400年前の建物だということになります。
――何かが違う――と僕のどこかが騒いでいたのです。





その胸騒ぎの原因が――アッ、柱脚だ!――と気付くのに、多くの時間を要す事はありませんでした。

「足もとの美」番外編 



そうです。4本の柱脚に板が挟み込んであるのです。
勿論アンカーボルトなどあるとは思えません。
礎石の上に柱が直接乗せてあるのが一般的なのに、これはわざわざ板を挟んであるのです。
「柱が礎石の上に直接だと腐りやすい」・とでも考えたのでしょうか・?
「いや、どうもそれだけではなさそうだ」・・と僕は自問自答しました。

「そうだ、これはレッキとした免震構造ではないだろうか・・・」と、いうのが僕の下した結論でした。
そしてそれは鳥肌が立つのを覚えた瞬間でもありました。

この頃のマンションビルや住宅の広告で〈免震構造〉という言葉をちょくちょく目にするようになりましたが、正にこの(鐘楼)は、地震の時の大きく揺れる力に抵抗するのではなく、横に滑りやい構造にしてあるのです。
それが〈倒壊の危険〉から建物を守るシステムとして機能していたのです――400年前から――と考えた時、恐ろしいほど〈先見の明ある棟梁〉がいたものだと理解したのです。
それが、鳥肌が立った瞬間でもあったのです。





足もとの美 番外編その3

折角ですのでこの寺の庭も紹介します。

 浜松の三ヶ日町にある摩訶耶寺(マカヤジ)は、鎌倉時代の庭として今から30数年前(たぶん僕の記憶に間違いなければ)発見されたことで一気に有名になりました。
そのつくりは平地に池を掘って、その土を築山にすることで立体感を創り出しています。一方、細江町のドウダン躑躅(ツツジ)で有名な長楽寺(チョウラクジ)の庭は、裏山の傾斜を使って立体感を創り出しています。
どちらも回遊式の庭になっていますが、同じ立体感を出している庭と言ってもその構造の基本的なところが違うと感じていました。
ここで紹介する〈百済寺の庭〉は、〈長楽寺〉と同じ裏山の傾斜を利用した庭ですが、その高低差のスケールを比べると、雲泥の差を感じます。

裏山の傾斜を利用した庭

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回遊式の庭から見た裏庭の池

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〈下界に見える建物が・・・〉といった表現がオーバーでないと思うぐらい高低差があります。




その高低差のある庭の一部に架けられた丸太の橋は、荒々しい石組みとマッチして、深山幽谷に架けられている橋を演出しているのでしょう。

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この橋を渡って上に行くと、根株に腰を降ろした仙人が、霞を集めて茶を入れている姿が見えそうでした・・・。


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